「英語ペラペラ」の罪

日本では、英語の能力があることを指して、「~さんは、英語がペラペラだ。」と言います。あるいは、「~さんは、英語が話せる。」という表現をする場合もあります。

35年の外資系企業勤務を通して仕事に英語を用いてきましたが、こうした言い回しや表現の罪の大きさを改めて感じています。

 

これらの影響で、多くの人が、特にビジネス英語(実用英語)に関して、2つの大きな誤解をしています。

 

 

 

 

何に関する誤解かと言うと・・・、 

l  どの能力が重要であるか

l  最初は何を諦める(割り切る)べきか

 

どの能力が重要であるか

英語に限らず言語の能力は4つのスキルに分けて考えることが出来ます。

l  聞くスキル

l  話すスキル

l  読むスキル

l  書くスキルと

 

「ペラペラ」は、「話すスキル」を強く連想させますが、 実際のビジネスシーンでは、 「聞くスキル」と「書くスキル」がずっと大事です。 

 

その理由に関しては、少し長くなりそうですので、この記事の中の別章で考えましょう。

 

最初は何を諦めるべきか

特別な環境で育った方は別として、普通の日本人が物心ついてから外国語として勉強することで、ネイティブと同等な英語の使い手になるのはムリです。(ある本によると、日本人が勉強することで軽口を叩き合うレベルまでになれる外国語は韓国語だけという説があります。)

また、実際、ビジネスシーンで使う英語に限定すると、全ての面でネイティブ並みになる必要もないのです。つまり、ビジネス英語の習得にあたっては、 何かを割り切る(諦める)ことになります。 では、何を諦めるのか?

 

ここでも、また、「ペラペラ」が誤解を生みます。

 

いかにも、映画やTVドラマを不自由なく聞き取れることが良いとする雰囲気が醸し出されます。

 

実は、これらの「カジュアル(非正式)な英語」の聞き取りこそ、最初は、諦めた方が良い。かく言う私も、映画やTVドラマはチンプンカンプンです。 ビジネス英語で求められるのは、ニュース、演説、発表、朗読などの 「フォーマル(正式)な英語」の聞き取りが殆どです。

 

もちろん、「カジュアルな英語」まで聞き取れるとこんな楽しいことはないでしょうし、考えただけでワクワクするでしょう。しかし、英語を日本人の学習者の観点で見ると、この「カジュアル」と「フォーマル」の差はあまりにも大きい。

 

国際結婚でもしない限り「カジュアルな英語」を不自由なく聞き取れるまでになるニーズは差し迫ったものでないことが多いのに、とてつもない努力が必要なのです。

 

 

ですので、あなたの必要とするのがビジネス英語なら、よほどの事情がない限り映画などを教材にするのは避けたほうが良いのです。

 

聞くスキルは、話すスキルに優先する

仕事で実際に英語を使っている方は、 なにか最近の会話のシーンを思い起こしてください。

左は、記憶を頼りに、自分が在職中に行っていた会話の一断片を再現してみたものです。ネイティブ(相手)により良い表現に言い換えてもらったり、相手の言うことをこちら(母袋)がそのまま反復したりしています。 それ以外は、単純な受け答えをしているだけで会話が構成されています。

日本人とネイティブのビジネス上の会話に関しては、実際には、このようなパターンで会話が進行することが多いはずです。仮にこちらから話題を切り出す場合であっても、 最初の説明(導入)が終わると、このようなパターンに入ることが多いと思います。

そして、大事なことは、このような会話は不自然でも何でもなく、十分にビジネス上の目的を果たしていることです。

 

まとめると、ビジネス英語においては、「聞けるようになると、話すのに困らない」のです。 これは同時に、「聞けないと、ほとんど話せない」ということも意味します。 これが、「聞くスキルが話すスキルに優先する」理由です。

 

 

また、前章の繰り返しになりますが、その際の、「聞くこと」の対象としては、 「フォーマルな英語」を優先的に考えるべきで、 よほどの覚悟が伴わない限り「カジュアルな英語」は、少なくとも最初は、敬遠すべきです。

 

書くスキルは、話すスキルに優先する

これは、正確性に対する要求水準が、書くほうが話すことに比べずっと高いことを言っています。

このことは、立場が逆の場合を考えるとよく分かります。 外国人と日本語でやり取りをしているシーンを考えます。 外国人の話す日本語は、たどたどしくともあまり気になりません。たとえ、ビジネスシーンであっても、意味不明であれば、こちらから聞き返したり、正しい言い方に誘導したりすることが出来ます。実際、話された言葉の場合、仮に言語として間違いだらけでも、「お上手ですね」とお世辞で終わったりするのです。

 

 

ところが、書かれたものについては、状況は全然違ってものになります。 特に、ビジネスシーンの場合は、 書かれたものは基本的に残るものなので、「正しさ」対する要求水準は高いものになります。目の前に日本語で書かれた契約書が置かれ、それが誤字脱字や文法誤り満載であったら、誰も、判は押しません。仮に、外国人が相手で数字などの内容そのものに間違いがなくてもです。

 

まとめると、ビジネスシーンでは、 「正しさ」に対する要求の度合いが、 「話すスキル」と「書くスキル」ではまるで違ったものであり、肝心なところでは、必ず、「書くこと」が必要になるのも事実です。