エスカレーションの「コツ」を知っていますか

「コツ」を知らないと酷いことになってしまいます。

 

そもそも「エスカレーション」とは

ビジネスシーンで必要になるライティングと言っても千差万別ですが、恐らく、色々な意味で最も高いスキルを要求されるものは、「エスカレーションメール」です。 

 

文字通りエスカレーションすることを目的にするメールの事なのですが、「エスカレーション」という言葉自体に馴染みのない方もおられると思いますので、以下、簡単に説明します。

 

ある特定のテーマ(顧客からのクレームの取り扱い方など深刻なものを思い浮かべましょう・・・)に関して、直接の担当者の間では合意に達することが出来ず、かと言って放置するわけにも行かず、上位のマネージメントの判断を仰ぐ行為をエスカレーションと言います。(※1)  簡単に言うと、「担当者間では折り合いがつけられないので、上で決めてくれ!」ということです。 実際に、グローバルな組織に属して仕事をしてみると、このようなことは、かなりの頻度で起こります。 特に、技術的なトラブルが多いIT業界などでは、日常の風景です。

 

例えば、次のような状況を考えてみましょう。 ここでは、あなたは日本の問い合わせ窓口の担当者であると想定します。

 

1) 日本で販売した製品に不具合があって、ある機能が動かない。

2) 別の機能を組み合わせて使うことで同じことが実現できるだが、少し面倒くさい。(つまり、回避策はあります。) 

3) 製品を購入した顧客は少しであっても余計な手間がかかることに立腹して、何が何でも、今月末までに不具合を直せと言っている。

4) 製品の開発部門は海外にあるが、技術的に難しい問題で、どんなに頑張っても来月末でないと解決策が提供できないと言ってきている。

 

 

このような展開になった時、あなたは、顧客と開発部門の板挟みになるのですが、どうしますか?

 

直接の担当者相手では埒が明かないので、開発部門のマネージメント(担当者の上司)にメールして、事情を説明した上で、通常とは違う格別な対応を依頼したいと考えるのではないでしょうか。 (例えば、別の部門からの支援があれば、早く解決できるかもしれません。 あるいは、開発エンジニアの休暇予定をキャンセルしてもらえば、早く解決できるかもしれません。)

 

こうした状況が、最もイメージしやすい、エスカレーションです。

効果的なエスカレーションにするために

私は、大手外資IT企業に在籍中の一時期、マネージメントの一員として、エスカレーションを頻繁に受ける側であったことがあります。 その立場から見るとよく分かるのですが、巧みなエスカレーションとそうでない(拙い)ものとの差が激しいのです。 拙いエスカレーションというのは、現場や担当者が困り果てている様子はビンビンと伝わってくるのですが、マネージメントに何を期待されているのかサッパリ分かりません。 そうなると、何度も何度も確認が必要になって、どんどん対応が遅れてしまいます。 その遅れによって、現場が更に焦るという悪いサイクルにはまってしまいます。

 

そんな経験もあり、巧みで効果的なエスカレーションを行うために、エスカレーション・メールの論旨は、次のように構成することをお勧めします。 これは、英語のスキル以前のことなので、言葉が日本語でも変わりません。 

  1. Factsは何か? 憶測や感情を一切入れず、客観的な事実関係のみを簡潔に説明します。
  2. 担当者間でのAgreementsは何か? 担当者間で、どこまでは認識や意見が一致しているか。 (上の例であれば、回避策があるため、実現したいことが全く不可能になっているわけではないことまでは、双方の担当者とも認識が一致しているでしょう。)
  3. 担当者間でのDisagreementsは何か? 最後に、担当者間で何が相違点として残っているのか。(上の例だと、回避策があるにもかかわらず、顧客が立腹している理由までは理解が一致していないかもしれません。)

 

このような論旨に沿ったエスカレーションであると、それを受けるマネージメントとしては、求められていることと、求められていないことが明確に理解できますので、解決策/落としどころを見つけやすいのです。また、エスカレーション・メールを書く側にとっては、実際にやってみると分かるのですが、状況を冷静に整理して、かつ、必要な情報を過不足な盛り込まないと、このような論旨展開のメールは書けません。つまり、重要なことを書き漏らすリスクも減らす効果があります。

更に、思わぬ副産物も

このエスカレーションのやり方には意外な副産物もあるのです。 上で説明した3つのポイントを意識してエスカレーションの論旨展開を考えると、半分以上の事案について、実はエスカレーションが不要なものと思えてくるのです。 例えば、その過程で、ある大事な情報が担当者間で共有されて来なかったことが分かることがあります。 それを共有してみると、担当者間でも十分にやれることが残っていると気が付くのです。


(※1) 最近では、「エスカレーション」という言葉は日本語としても定着した感もあります。この記事の中で説明しているように、専ら、「話を上に持ち上げる・・・」という意味で使います。 しかし、もともとの英語の”escalation”は、2つの違った局面で使う言葉です。 この辺を理解していないと、海外とのやり取りの中でどことなく話が行違うことがあります。 詳しくは、こちらを参照してください。