目標を英語で書き表す技術

上司や部下が外国人という人は、是非、お読み下さい。

 

エグゼクティブの書いた目標

外資系企業や海外に進出している日本企業で働いていると、自分の上司や部下が外国人という場合が少なからずあります。 筆者も、日本アイ・ビー・エム(株)在職中は、上司がアメリカ人であった期間が長くありました。 コミュニケーションは英語ですので、年初に設定する業務上の年間目標も英語で書いたり話したりすることになります。 どんな組織でも、業務上の方針や目標は基本的に上意下達です。 つまり、自分の目標は、上司の方針や目標を反映したものでないといけません。 そんな事情でしたので、アメリカ人の上司の立てた年間目標を目にする機会も度々ありました。 

 

その際、上司の目標としては、次のようなものが多かったのです。 (ここで、“XYZ”は、その上司が責任を持っていた部門の名前と思ってください。 “YoY”は、“Year On Year”の略です。)

 

“Deliver XYZ budget revenue at $10M with 10% YoY growth.”  

 

内容としては、「XYZ部門の売り上げを、対前年比10%増の10M$とする」ということですが、内容はともかくとして、英語としてどう感じますか。 少し違和感を覚えるのではないでしょうか。  「目標とは、命令形で書くものなのか??」 などなど・・・。 

この例から分かるように、英語で目標を書く時には、知っておくべき留意点があります。

目標と潜在意識

巷には、「成功習慣」をテーマにした本やセミナーなどが溢れていますが、それらの多くで、「潜在意識」の重要性が強調されます。 筆者なりにまとめると・・・

  • 人の行動は、「明確に意識して行っているもの」、及び、「無意識に行っているもの」に大別されます。 前者は「顕在意識」が司っているもので、後者は「潜在意識」が司っているものです。 習慣化してしまった行動は、無意識に行うものです。 例えば、喫煙が習慣になると、意識して考えることなく(つまり、無意識に)に煙草に手が伸びるでしょう。
  • 様々な研究から、人の行動の圧倒的に多くは、無意識に(つまり、潜在意識に操られて)行っていることが分かっています。 従って、何かの目標を達成するためには、潜在意識を味方につけられるか否かが大事になってきます。
  • 潜在意識には幾つかの特徴があるのですが、本レポートに関連するものだけを取り上げると、次のものがあります。
  • 潜在意識には、思ったことを、そのまま実現しようとする働きがある。 よく、「願いはかなう」などと言いますが、無意識の領域で思っていることが実現化してくるということが本当にあるようです。 
  • これに関連しますが、潜在意識には、相対的な価値観がないため、善悪や真偽の区別がつきません。 従って、良いことであっても悪いことであっても、思ったことを、その通りに実現しようとします。
  • 潜在意識は主語が分からない。 我々の周りで他人の悪口ばかり言っている人がいますが、話している当人が、なんとなく批判の対象になっている人に似ていくと感じます。 これは、潜在意識が、自分と他人の区別がつかないことによって引き起こされる現象とのことです。
  • 潜在意識は、また、現在、過去、未来の区別が出来ず、否定形も理解できないと言われます。 例えば、飛行機の非常事態の際のCA(客室乗務員)の声かけとしては、「立ち上がらないで!」はNGで、「座って!」と肯定形としています。  「立ち上がらないで!」と叫ぶと、思わず(つまり、無意識に)立ち上がる人が出るのでしょう。

以上の特徴を考えて、実現したい目標を潜在意識に受け入れられ易い形で記述(言語化)することが重要です。 その為には、年間目標の場合であれば、あたかも既に一年が経過し、目指したものが実現している状態を目標として記述するのが良いと言われます。

それを英語で実現するには・・・

前項の説明は、使われる言語に依存せず成り立つものでした。 では、「年間目標をあたかも一年が経過し、目指したものが実現している状態を目標として記述する・・・」を英語で行うにはどうすればよいのでしょう。 結論としては、以下のポイントに留意して目標を記述すれば良いのです。

  • 現在時制(present tense)を用いる。
  • 主語は、一人称(first person)とする。 ただし、省略されることも多い。
  • 肯定形(positive form)で書く。

例として、「現在体重が70キロで、一年かけて65キロにしたい。」という目標を考えてみましょう。 これは個人的な目標ですが、要領は業務上の目標であっても同じです。 この場合、以下の(ア)よりも(イ)の方が目標設定の記述としては望ましいと考えるのです。

(ア) I will lose 5 Kg. 

(イ) I weight 65 Kg.