日本人にとっての英語を始めとして、我々が生きている間に獲得するスキルのほどんどは、学習という行為を通して身につけます。そして、必ず4つのステップ(段階)を経ると言われており、「学習の4段階」と呼ばれます。
- 無知の無能
- 意識の無能
- 意識の有能
- 無意識の有能
クルマの運転で考えてみましょう
これを理解するために、「クルマの運転」というスキルを例に取りましょう。(学生の方は、ダンスでも楽器の演奏でも同じことですので、自分にとって身近なスキルに置き換えて読んでくださいね。)
最初は、クルマの運転に関して何の知識もないし運転も出来ません。 ほとんどの人は、エンジンを始動することすら出来ないでしょう。これが、第1段階の「無知の無能」状態です。
次の段階としては、教習所に通い教官から教えてもらいます。 このような座学を通してある程度は知識が頭に入りますが、かと言って、いきなり実際にクルマは運転は出来ません。これが、第2段階の「意識の無能」(意識できているが、実際には出来ない)状態です。
次に、教習所内の練習コースに出て実際にクルマを動かすことになります。ブレーキを踏んでからエンジンを始動する、ハンドルをどの程度切るべきか、切ったハンドルをいつ戻すべきか、ブレーキはいつ踏むべきか、車間はどの程度取るべきか・・・等、教えてもらったことを一生懸命思い出しながら、クルマを動かすことになります。 つまり、頭で考えながら(意識しながら)、四苦八苦してようやく出来る状態になります。これが、第3段階の「意識の有能」状態です。
更に進んで、免許を取って何ヶ月か経ち運転に慣れてくると、最終的には運転のことを何も頭で考えることなく運転できる段階に至ります。 実際、運転しながら隣の人とかなり深刻な会話をしたり、音楽を聞いたりということが出来るわけです。 これが、最終の第4段階の「無意識の有能」(意識していなくても出来る)状態です。 よく、スキル(技能)に関して、「身についている・・・」という表現がされますが、これは第4段階にまで至ったことを指すのでしょう。
「学習の4段階」と英語の関係
では、「学習の4段階」と英語がどのように関係してくるのかを考えてみましょう。 英語と言っても範囲が広いので、とりあえずは、「関係代名詞」について見てみましょう。
例として、「これが私があなたにしてあげられることの全てです。」を英訳する必要があるとします。 次の関係代名詞の使い方が違う3つの英文の中の1つが文法的に誤りなのですが、分かりますか。
- This is all that I can do for you.
- This is all which I can do for you.
- This is all I can do for you.
正解(つまり、文法的に誤っているもの)は、2番目なのですが、ここでは正解に至るプロセスに注目したいと思います。
英語ネイティブは違和感で分かる
多くの英語ネイティブは、「口ずさむ」ことで正解が分かります。 考え込む必要もなく、理由に思いを巡らせることもなく、「無意識に」2番目に対して違和感を覚えるのでしょう。 英語を学習ではなく本能で身に着けた英語ネイティブは、第1段階(無知の無能)から一足飛びに第4段階(無意識の有能)に至っていると考えられます。
日本人は、4つの段階を必ず経る
残念ながら、日本生まれ日本育ちとしては、英語ネイティブのようには行きません。 英語は学習を通して身につけるべき外国語ですので、上で説明した「学習の4段階」を必ず経ることになるのです。 つまり、第2段階と第3段階を飛ばすわけには行かないのです。 この場合の第2段階とは、文法的な理解です。 (今回の例だと、先行詞が不定代名詞なので関係代名詞は”that”でなければならない。 また、目的格の関係代名詞は省略可能・・・・といった解説になります。) また、第3段階では、その文法的な理解をもとに練習問題に取り組んだり、繰り返し音読します。第3段階を経ると、最終的には第4段階に至ることができます。 ここまで来て初めて、英語ネイティブと同じように、口ずさむことで無意識に正解が見つけれれるようになります。
何れにせよ大事なのは、日本生まれ日本育ちである我々の場合、必ず第2段階(頭で理解する)と第3段階(その理解を意識して使ってみることを繰り返し行う)は必ず通らないといけないことを納得しておくことです。