留学生に見るアジアの英語教育事情

今年も、いよいよ大学での授業が始まりました。(この記事は、20194月に書いています。平成最後の月となりました。)

留学生が混在する授業に対する懸念

大学で教えるのは昨年が最初の経験でした。今年は、2年目ということもあり、担当するコマ数が大幅に増えました。その結果、アジア諸国からの留学生が、合計すると20名程にもなりました(汗)。 出身地は、やはり中国が圧倒的に多く、次いで韓国、台湾、マレーシア・・・などで、全学生に占める割合は10%程度です。アジアからの留学生が混在するクラスでの英語の講義を行うに際し、私の率直な懸念は、「不定詞とか分詞構文などの英文法用語をそのまま使って構わないのか?」ということでした。

  

 

結論から述べると、留学生の大半を占める中国や韓国の出身者には、全くの杞憂でした。彼らは、我々が日本で使っている文法用語に違和感を覚えないどころか、実は、我々と同じ用語で勉強してきたのです。

英語教育における、日中韓の関係

これは、歴史的経緯に依るみたいですね。韓国と中国とでは、経緯が全く違いますが、似たような結果になります。以下、韓国と、中国について考察してみます。(ネットを大分検索したのですが、英文法用語と韓国/中国との関係を直接論じた記事が見当たらず、私自身の推測が大部分です。従って、多少の間違いを含んでいるかも知れません。)

 

 

1 韓国に関しては、日本の統治下時代に、日本の教科書をベースとして英語教育が始まったと推測されますので、まあ納得のいく状況です。ただし、現在の韓国は漢字を廃止していますので、日本で使っている文法用語のハングル読みが教科書に載っているとのこと。ハングルは日本の平仮名のようなものなので、例えると、「この“it”は、形式目的語である。」という内容を、「この“it”は、けいしきもくてきごである。」という文章で習っているようなものでしょう。 韓国出身の人に聞くと、あるハングル読みが漢字に由来するものであるか否かは、響きから直ぐに分かることのようです。従って、日本に留学するに際して、漢字を勉強すれば、頭に入っているハングル読みの文法概念と結びつけるのは容易なことなのでしょう。

 

 

2) 一方、中国に関して言うと、我々は「日本は漢字を中国から学んだ・・・」という意識が強いので気づきにくいのですが、日本人が作って中国に伝わった漢字が多数あります。例えば、”freedom”のように西洋から入ってきた言葉に対して、日本では、「フリーダム」ではなく、「自由」という言葉を作りました。これは、良く考えてみると、驚くべき水準の知的作業です。この類の言葉(日本語)を、中国の留学生が大量に持ち帰り、中国語の中に溶け込んで、今に至っているのですね。(漢字の書体は簡略化されたりして、多少は違っているでしょうし、発音は全く違うかも知れません。)有名な話ですが、「中華人民共和国」という国名のうち、「人民」も「共和国」もメイドインジャパンです。英文法用語も同様な経緯を経て、同じものを使うようになったと推測されます。

 

 

 

まとめると、韓国は発音が同じことが決め手になって、日本で使っている文法用語に慣れ親しんでいる。中国については、基本的に同じ漢字を使うことを通して、日本で使っている文法用語に慣れ親しんでいる・・・と結論付けられると思います。

 

台湾からの留学生が1名いますが、歴史的経緯はよく分からないものの、漢字でそのまま通じますので、表面的には中国の留学生と同様です。

 

マレーシアからの留学生

ということで、私に残された課題は、マレーシアからの留学生2名にどう対処するかです。

 

実は、そのうちの1名は、来日前に現地のプリ・スクールに通って日本で使っている文法用語も習ったようで、結果的には問題なしでした。

 

残りの1名が問題で、授業で文法用語を使ってしまうと、全くのお手上げ状態でした。

 

妙案が思いつかないのですが、文法用語を英語で言い換えると多少マシの様子。例えば、「不定詞」と板書する際に、”infinitive”を併記してあげるのです。

 

それやこれやの経緯があり、授業で使いそうな用語を一枚に収まる一覧にして、その英語表現を併記したもの作ってその学生には渡すことにしました。

 

 

 

Better than nothing.”程度のものです(笑)が、参考までに、以下に掲載しておきます。

ダウンロード
基本的文法用語:日本語と英語の対比
基礎的文法用語一覧.pdf
PDFファイル 50.0 KB

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コメント: 1
  • #1

    小野正信 (月曜日, 22 4月 2019 18:22)

    こんにちは
    大変稀で貴重な英語教育に従事されてるんですね。
    ちょっと不思議な感じもするのですが、そもそもアジアからの留学生は
    英語を習いに日本に来てるのでしょうか。
    韓国なんかは日本より遥かに英語教育の質が高い印象が
    しますが、どうなんでしょう。
    それと彼らの英語学習の目標はどの辺に有るのでしょうか。
    単に日本での学位が欲しいのか、英語力を活かして国際的に
    活躍したいのか、宜しかったら教えて下さい。